2023.6.30
刷毛(はけ)の種類と選び方
家具や小物の塗装、壁の塗り替えなど、塗装に欠かせないのが、塗装用品。塗料を塗るための道具には、刷毛、ローラー、スプレーなどがありますが、塗装用品にはそれぞれ特徴があり、どれも同じように仕上がるものではありません。塗装用品の選び方次第で塗装の仕上がりが大きく変わってきます。今回は、塗装用品の中でも使用頻度の高い刷毛(はけ)の種類や用途別の選び方などについて詳しくご紹介します。
目次 1章:刷毛の形 2章:刷毛の材質 3章:刷毛のサイズ 4章:塗料によって刷毛を使い分ける 5章:その他の刷毛
1章:刷毛の形
刷毛は、動物の毛や化繊の糸などを柄と言われる木やプラスチックなどの板に挟み、糸やワイヤーなどで綴じたものです。絵などを描く際に使う筆と似ていますが、違いについては細かく定義されていません。刷毛は幅広のものが一般的なので広い部分を塗る道具、筆は先が細くなっているものが多く絵や字を書く道具と言っても良いでしょう。
刷毛の形は大きく3つに分類され、筋交い刷毛、平刷毛、寸胴刷毛と呼ばれます。
筋交い刷毛
筋交い刷毛とは、持ち手の柄の部分が斜めになっている刷毛のことです。壁などの塗装時、刷毛と柄に角度がついていることで塗りやすくなっています。この形は日本独自のものです。えんぴつの持ち方と同じで、手先を細かく動かす繊細な作業をすることができます。
平刷毛
平刷毛とは、ベタ刷毛とも言われ、平らな面や広い面を塗るのに適しています。刷毛部分と柄が一直線になっています。
寸胴刷毛
寸胴刷毛とは、寸胴の様な形をした刷毛の事です。 寸胴刷毛は、塗料の含みが良いのでたくさんの塗料を一度に塗る事ができます。 二つに割った柄の先端に毛の束をはさんで、毛先が柄の延長に向く様に取り付けた刷毛です。 また、寸胴刷毛は、毛の束の幅で大きさを表します。
2章:刷毛の材質
刷毛の毛の部分に使われる材質には、馬やヤギ、豚などの動物の毛(獣毛)と化学繊維(化繊)があり、それぞれに特徴があります。
毛の材質によって刷毛の価格も変わってきます。動物の希少部位の毛を用いたものは高額なものが多く、化繊など大量生産できるものは比較的安価で販売されています。
獣毛
獣毛の刷毛は塗料含みが良いのが特徴です。動物の毛には人間の髪の毛と同じうろこ状のキューティクルがあり、表面が凸凹しています。一見まっすぐに見える毛も実際はうねりなどがあり、この凸凹やうねりが塗料含みの良い理由です。
馬毛は、柔軟性・弾力性に優れているため、一般的な塗装刷毛として広く使われています。耐水性・耐薬品性も優れており、体や尾など部位によって毛の柔らかさや太さに違いがあります。たてがみはコシが強く塗料含みの良い部位、胴体は柔らかくまとまりの良い部位です。尾の毛は太く、塗料用としては不向きのため、接着剤塗布用などの用途に使われます。尾のつけ根の毛は天尾と呼ばれ、最高級とされています。
豚毛は、硬くコシのある毛質が特徴です。弾力性・柔軟性にも優れています。
ヤギ毛は、柔らかく馬毛と同様、塗装に広く使われます。塗料含みが良く、刷毛跡も目立ちません。尾の部分はヤンオと呼ばれ、白い刷毛の高級品として使われます。ヤンスと呼ばれるあごの毛はコシが強く、背中の毛はニス用に使われます。
化学繊維(化繊)
ナイロンやポリエステルなどの化繊は、吸水性が低く、獣毛の刷毛と比べると塗料の含みが劣るのが一般的です。最近では、技術の進歩で化繊に獣毛のようなうねりを持たせたものや、塗料含みを良くした化繊刷毛も開発されています。水性塗料に良く見られる化学変化で硬化する塗料などは、アルカリに弱い獣毛の刷毛は適さないので化学繊維の刷毛を使用します。
3章:刷毛のサイズ
①柄長 ②毛丈 ③幅(号数) ④玉厚
刷毛のサイズとは、一般的に刷毛幅のことを指します。筋交い刷毛、平刷毛共に号数やミリメートルでの表示が一般的です。号数は、数が大きくなるにつれ刷毛のサイズが大きくなります。1号は1寸なので、おおよそ、号数×3でミリメートルに換算することができます。関東の刷毛と関西の刷毛では換算方法が違うので多少差異がありますが、10号は30mm程度となります。
刷毛のサイズは、塗る場所や面積、形状などによって選びましょう。幅だけでなく、毛丈や玉厚、柄の長さなどが表示されているものもあります。刷毛は、「大は小を兼ねる」ではありません。大きな刷毛で細かな部分を塗ろうとしたり、逆に小さな刷毛で広い面を塗るのは手数が増えてしまい効率的でないばかりか、仕上がりもきれいではありません。
ホームセンターなどでは、使用頻度の高い30mm、50mm、70mmの刷毛がセットになっているものもありますので、用途に合わせて使い分けましょう。
4章:塗料によって刷毛を使い分ける
刷毛の種類には、形状、材質、サイズなどさまざまなものがありますが、刷毛を選ぶ際に最も重要なのが、塗料のタイプです。塗料には、水性塗料と油性塗料があります。使う塗料が水性塗料か油性塗料かで、刷毛を使い分ける必要があります。
水性用
水性塗料を使う場合は、柔らかくてコシがあり、塗料離れの良い化繊の刷毛が良いでしょう。獣毛の刷毛は、アルカリに対する変化が起き刷毛の中で塗料が固まってしまうことがあります。化繊の刷毛が良いのはそのためです。白っぽい毛をしたものが一般的です。
油性用
油性塗料を使う場合は、馬やヤギ毛、化繊などのコシのある刷毛を使います。油性用と表示のあるものは溶剤に対応しているので安心です。塗料の含みや伸びが良く、毛色は黒や茶色などが多く出回っています。
万能刷毛(多目的用)
さまざまなタイプの塗料に使える万能タイプの刷毛もあります。万能刷毛は、オールマイティに使える刷毛です。水性塗料はもちろん、外装や鉄部用など高粘度の油性溶剤系にも対応しています。
刷毛を選ぶときは、柄の部分やパッケージに水性用、油性用、万能と用途が表示されているものを選ぶと間違いないでしょう。
5章:その他の刷毛
ラッカー・ニス用
刷毛目が残りにくいよう、毛先の細いヤギ毛やナイロンなどが使われます。比較的毛の長さが短く、塗料を薄く伸ばせるようになっています。水性塗料か油性塗料かで使い分けます。
目地用刷毛
毛先が細くて幅の小さい刷毛です。平刷毛よりも柄が長くなっています。狭い目地や隅の部分など、普通の刷毛で塗りにくいところを塗るのに重宝します。水性用、油性用で使い分けます。
ラスター(ダスター)刷毛
塗装前の下地処理や、掃除などに使用される刷毛です。
隅切り・ダメ込み刷毛
入り隅や枠周り、目地部分など、端や狭い部分の塗装をする際の仕上げ用刷毛です。この刷毛は、先がばらつかず、広がらないことが重要です。比較的小さいサイズのものを隅切り、大きめのサイズの刷毛をダメ込みと呼ぶようです。水性用、油性用で使い分けます。
コテバケ
刷毛部分が平たいスポンジのパットになっているため、塗料の含みも良く、均等に平らに塗ることができます。刷毛目跡が残らないため、初心者でも簡単にきれいに仕上げることができます。柄の部分とパットの部分が外れるようになっているので、塗装後の手入れも簡単です。パットに長い柄をつければ、高いところの塗装も可能です。
トタン用刷毛
トタンの塗装に適した幅広の平刷毛です。
サビ止め用刷毛
鉄骨用刷毛
鉄骨などの金属塗装用刷毛です。毛量が多く腰が有るのが特徴です。薬品刷毛
酸やアルカリなどに抵抗力を持った刷毛です。